内壁下地

現存する世界で一番古い木造建築は法隆寺であるが、その壁には土壁が塗られ、下地には木舞が使用されていました。材料は檜材の割肌六分角が用いれ、現在のように竹小舞ではなく木材が使用されていたと左官博士の山田幸一先生は書き残しています。当時の小舞は「古麻比」「樞」「櫚」などと書かれ、細長い木材のことをコマイと呼んでいて現在のように下地の工法を指さしていたのではなく材料の名前で呼ばれていたました。

【1】木舞下

木舞下地は真竹、男竹、女竹、しの竹などを格子状に組んで、藁縄、しゅろなどでかきつけて、この上に荒土を塗りつける下地を竹木舞下地と呼びます。柱・梁・土台などの構造体と繋がっていないため構造材に変形があっても土壁に応力が伝達しない優れた下地であであります。木舞は横竹、及び縦竹それぞれの間隔が不同であると、木舞の強さ、また塗り付けなどに大きく影響します。したがって、目透かしは竹割りの幅の約2倍以上とし、またかくとき縦竹、横竹、ともに根元を一本ごとに相互にして、木舞が平均の強さを保つようにします。竹は強く長いものを縦竹に、短い竹は横に用います。間渡りは強靱なまっすぐなものを使用し、釘打ちするところはきりもみして孔をもうけておきます。また縄は適当な長さに切り縄のかき付けは上級な「千鳥がき」と並級の「巻がき」があります。

木舞下地の概念図

【2】バンブーネット下地

真竹を四つ割にしてステップルで縦横に格子状に組合わせてあらかじめネットしたもので木舞のラス状ともいえます。貫板に釘またはステップルで止めます。

バンブーネット

【3】せっこうラスボード下地

せっこうラスボードは型押しラスボードで9.5mm厚です。型押しラスボードとはボード表面のくぼみが半貫通のもので、左官下地の材料は吸水により伸縮しないものがよいとされています。木造下地の場合、大壁、真壁等があり、左官塗りの仕上厚さを含め造作との取り合い、ちり寸法等設計に応じて納まりを検討しておき、ボードの割り付けに留意して受木を配置し、間柱、胴柱、開口部を補強して堅固に仕上げる必要があります。塗り材料であるせっこうの弱酸性による発錆を防ぐため、くぎその他取り付け金物は、溶解亜鉛メッキされたものを使用し、更に、ボード取り付け時にボード用くぎ頭のメッキが破損して、仕上げ面に錆を生じることがあるので、その際には、合成樹脂調合ペイント等をくぎ頭に塗装しておく必要があります。

せっこうラスボード下地

【4】せっこう平ボード下地

せっこう平ボードは平面性がよく、左官下地として作業性がよく現在その使用量が多くなってきました。それに伴い、平ボードの下地にして、左官の直塗りが普及していますが、下地の剛性の不足によるひび割れの発生、ちり切れ等が生じることがあります。またボードを含む塗り仕上げの厚さが不足すると、ボード継ぎ手でひび割れを生じ、僅かな衝撃で破損したり、遮音性能が低下する等の支障をきたすことがあるので充分な注意が必要であります。

【5】せっこうボード直張り工法

コンクリート面の不陸直し、付け送りなどの下地調整及び下地骨組みを必要とせず、作業が徹底的に省力化できます。また、現場の汚れが少なく、養生費などの節約も可能です。下地に直張り用せっこうを団子状に鏝で塗りつけせっこうボードを圧着します。せっこうが硬化後、直ちに目地処理し、ペイント塗装、壁紙・クロス張り、各種吹付けの下地にします。半乾式工法といえるもので、工期短縮になります。

【6】木ずり下地

木摺り下地は日本古来のものではなく明治中期に洋風建築の工法として使用されるようになりました。漆喰、ドロマイとプラスター、せっこうプラスターなどに使用されてきましたが、せっこうボードの使用によりその需要は少なくなってきた。木摺下地は柱、真柱、野縁等に厚さ7mm、巾30mm~40mm位の杉材を、約7mm間隔の目透かしをつけて釘止めします。釘は受け材に2本ずつ打ち、継ぎ手は受材の心で6mmの位の目透かし継ぎとし,6枚以下ごとに乱継ぎとします。木摺り下地は仕上げ材にひび割れ剥離が起こらないように歪みを取り、目違いないように打ち上がり面が平らになるようにします。