素材と工法(素材:セメント系結合材)
セメント系結合材
セメントは水と混ぜ合わせ、混練し時間と共に硬化する粉末をいいます。語源はラテン語のCaedereから、Caedimentum,Cementumと転じて、今日のCement,ciment,Zementになっといわれ、石灰を主成分とした無機質接着材を意味します。セメントの中ではポルトランドセメントがコンクリート、左官用素材として一般的です。そのポルトランドセメントとは1824年イギリスのリーズ市の煉瓦職ジョセフ・アスプディンが特許を得たことが始めとされています。これを固めたものがポルトランド島から産出される建築用石材に似ていることによって命名されました。日本に輸入されたものは明治末期ですが、その後はセメントモルタルは左官の主要的材料となりました。セメントと名のつくものは、数多くその範囲も広く、ここでは左官工事に使用されるものの代表的なものと特徴をあげてみます。
【1】普通ポルトランドセメント
代表的な水硬性セメント(水中でも固まる)であり、最も広く使用されているものです。製造原料は石灰石・粘土・鉱滓などで、これらを粉砕、焼成(約1450℃)します。これをクリンカーといい、微粉砕してセメントができます。最終工程においてセメントの凝結時間を緩和するために石膏が加えられます。地上で化学的に安定している岩石類を高温で脱水したものであるため、このようにしてできた、セメントは著しく不安定な状態になっています。そこでセメントは再び水と結合して安定な形である、もとの岩石になろうとするから固まるのです。
ポルトランドセメント
x1500
セメントの粒子は大きいほど水和反応が遅くなり凝結時間は遅くなります。粘性は小さくブリージング少なくなります。
【2】白色ポルトランドセメント
ポルトランドセメントの灰色要素の鉄分を取り去ることで純白になります。ポルトランドセメントと性質は変わりがありません。これに、顔料を加えることにより、発色・着色を可能することができます。左官工事では人造石工事・着色モルタル・着色吹き付け材料と多岐にわたって利用されています。
【3】早強ポルトラドセメント
化合物の構成を代えて、セメントの粉末をより微細にして、早く固まって強度を出すようにしたものです。普通のセメントが7日で出る強度を3日で、3週目に出る強度を1週で発現します。この特徴を利用して補修・改修等で早く強度を出したいとき、また冬場の工事や工期がない工事に使用すると便利です。しかし早く強度がでるために、普通ポルトランドセメントに比べると収縮が大きく割れなどがおきやすい欠点もあります。
【4】既調合セメントモルタル
今日、現場で調合しないで、現場での状況に併せて、すでに骨材等を混ぜ合わせた様々な袋詰めされた既調合モルタルが販売されています。特に外壁のラスモルタルでは、作業性改善や品質の安定化・均質化ならびに左官工事の省力化を目的としております。環境保護と天然の川砂の枯渇が社会問題として叫ばれる中、天然砂を使用せず、リサイクル素材の発泡細骨材を各社独自に数種を選び、工場で既調合してあり、現場では水だけを加えて練るだけで良質なモルタルになります。現在、外壁用の既調合モルタルには品質基準があり、日本建築学会の建築工事標準仕様書 JASS 15 左官工事に規定されている JASS 15 M-102 「既調合セメントモルタルの品質規準」に合格したものを用いることにしましょう。