掻き落とし仕上げのテクスチュア
骨材の選定や掻き取りの程度により、微妙な趣きの違いを演出
「荒らしもの」仕上げの一種で、表面をブラシなどで掻き取り、素材の質感を豊かに表現するもの。一般に、混入された骨材の粒度が大きければざっくりした表情になり、逆に小さいとしっとりした表情になるとともに、掻き取り量の多少により風合いに微妙な変化をつけることができる。 |
モルタルリシン掻き落とし仕上げA |
歩掛 4m2/人日 特徴 川砂を混入したクリーム色のモルタルの表面を掻き落として、やや粗目に仕上げたもの。 |
モルタルリシン掻き落とし仕上げB | モルタル掻き落とし仕上げC | 珪藻土掻き落とし仕上げ | ||
歩掛 4m2 /人日 特徴 白セメントに骨材として寒水石を混入。表面の凹凸を掻鏝してざっくりした仕上げにしたもの。 |
歩掛 4m2 /人日 特徴 聚楽色のモルタルに骨材として砂を混入し、和風の素材感を表現した落ち着いた仕上げにしたもの。 |
歩掛 4m2 /人日 特徴 表面を鏝引きした後、仕上げブラッシングを施して洗い出し風に仕上げたもの。珪藻土の質感に独特の味わいがある。 |
優しく深みのある肌合いと質感が高級感を演出 |
■特色 |
骨材を混入したモルタルや珪藻土などの表面を、ブラシや鏝で掻き落とし、自然な風合いで仕上げる工法。混入する化粧用骨材の種類や配合によって、多様な表情を創り出すことができる。落ち着いた質感とたたずまいを表現できることから、高級住宅の外壁にも数多く採用されている。 |
■適した部位 |
住宅および一般建築の外壁をはじめ、塀・柱などに用いられる。 |
■性能評価 |
材料により、それぞれ「セメントモルタル塗」「珪藻土塗」の項を参照のこと。ただし防水性能がやや落ちる場合もある。 |
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■施工工程 |
下地の清掃を行い、吸い込み具合を調整するために下地を水で湿す。濃度の高いシーラーを塗布すると、下地への吸い込みが悪くなるので注意を要する。単色系の骨材を使用する際は、あらかじめ必要に応じて下地に骨材と同色系のモルタルを塗り、木鏝で押さえて硬化させておく。 |
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■下地 |
「セメントモルタル塗」「珪藻土塗」の項を参照のこと。 |
■材料と調合 |
化粧用骨材には、寒水石や着色した川砂、パーライトなどの軽量骨材、茶金蘭、白水晶などの鉱物粉砕物などが用いられる。セメントやプラスターと合わせて混練りする。 |
■仕上げ |
下塗りの表面を水で湿した後、水引きを見てリシン材を塗り付ける。塗布後は、塗り付け鏝でよく伏せ込み、硬化した頃合いを見計らって、ワイヤブラシまたは鏝で掻き落とす(掻き落とし用の専用道具を用いる場合もある)。珪藻土の場合は、仕上げ材を平滑に鏝塗りした後、翌日以降十分に乾燥硬化したことを確認して、ワイヤブラシで表面を掻き落とす。外壁用仕上げ材に、蛭石や桐生砂を混入すると、深みのある質感が得られる。 |
■メンテナンス |
セメント系リシンは、結合材がセメントであるため、夏場のドライアウトや冬場の白華現象(塗り層の可溶性塩基が表面に析出し、塩を吹いたような状態になること)が起こることがある。これらを防ぐためには、直接壁面に雨水がかからないようにするなど、壁面の水廻り処理を十分に行っておく。 |
粗目リシン材(骨材は寒水石)の上塗りの施工 | 同、掻き落としの作業 | 細目リシン材(聚楽色和風仕立て)の上塗りの施工 | 同、掻き落としの作業 |