内装用途に広く適応。平滑で質感のある純白の仕上がり
石膏プラスター塗とドロマイトプラスター塗は、ともに平滑で純白の仕上がり面が得られるという点が共通するが、石膏プラスターは、混入する骨材の粒度や顔料などによって、より変化に富んだ高い質感が得られることが特徴。一方、ドロマイトプラスターはその作業性の良さから、可塑性の高いテクスチュア表現に適している。 |
ドロマイトプラスター押さえ仕上げ |
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歩掛 5m2/人日
特徴 仕上げ鏝で撫であげた後、水刷毛で仕上げる。きめの細かい仕上がり面を比較的容易に得ることができる。 |
ドロマイトプラスター叩き仕上げ |
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石膏プラスター押さえ仕上げ |
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歩掛 4.5m2 /人日
特徴 素材の持つ可塑性の高さ、作業性の良さを活かしたテクスチュア。変化に富んだ表情を提供する。 |
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歩掛 5m2 /人日
特徴 石膏独特の豊かな質感をそなえた純白の仕上がり面。混入する砂の粒度によってその表情は多彩。 |
成形の自由度と作業性に優れ、幅広い用途に多彩な表現が可能。
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■特色 |
純白で平滑な仕上がり面を比較的容易に得ることができる。しかも成形の自由度が高く、多彩な「荒らしもの」のパターン表現も可能。石膏プラスターは乾燥に伴う収縮がほとんどないため、壁面に亀裂が生じにくいという利点があり、ドロマイトプラスターは、糊材を必要としないため混練りが容易で作業性が良い。強度は石膏プラスターの方が強い。 |
■適した部位 |
石膏プラスターを塗った石膏ラスポード下地は、屋内の塗り壁下地としては最も一般的。一方ドロマイトプラスターは、その作業性の良さから、鉄筋コンクリート建造物の内部で多く使用されている。 |
■性能評価 |
石膏プラスターは、火災時に多量の水分を放出して温度の上昇を抑えるため、防火・耐火性は高いと言える。その半面、保水性が高いため水気の多い場所には適さない。また、十分な硬度を備えており耐久性は高い。 |
■施工工程(石膏プラスター塗) |
練り合わせした塗り材は、およそ1時間前後で凝結し始めるため、必要量だけを練り合わせるようにし、できるだけ迅速に作業を進める。石膏ラスボード下地の場合、下塗り・中塗りはボード用石膏プラスターを用い、上塗りは混合石膏プラスターで行う。その他の下地については、主にセメントモルタルで下塗り、ムラ直し、櫛目入れなどを行い、2週間以上かけて完全に乾燥させた後、混合石膏プラスターを用いて中塗り、上塗りを行う。塗り作業中はできるだけ通風をなくし、急な硬化を防ぐとともに、直射日光が当たらないように留意する。 |
施工工程断面図
(石膏プラスター塗:石膏ラスボード下地の場合) |
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施工工程フローチャート
(石膏プラスター塗:石膏ラスボード下地の場合) |
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■下地 |
石膏ラスボード下地のほか、コンクリート系、レンガ、ラス、ALCパネル、PCパネルなどが使用される。ただしドロマイトプラスター塗でALCパネル、PCパネルなどの平滑で吸水性の高い下地を使用する際には、十分な付着力が得られないことがあるため、その対策として、接着増強剤などを塗布して付着力を高めるようにする。 |
■材料と調合 |
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石膏プラスター
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川砂
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下塗り
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1(ボード用)
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1.5
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中塗り
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1(〃)
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2.0
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上塗り
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1(混合石膏プラスター・上塗り用)
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0
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※石膏ラスボード下地の場合
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石膏プラスターは、練り合わせる水と川砂の量で強度を調整する。材料は速乾性が高いので、練り合わせ時間は5分を目安に収めるようにし、一度に多量の練り合わせは避ける。なお、ドロマイトプラスターにセメントの混入は避ける。 |
■仕上げ |
上塗り終了後、水引き加減を見て仕上げ鏝で撫で上げる。最後に水刷毛で仕上げていくと、滑らかで純白の仕上がり面が得られる。逆に艶消しで仕上げる場合は、プラスター刷毛に水を含ませ、直線に刷毛引きして表面の鏝光りを消す。このほか、櫛引きやワイヤブラシ引きなど「荒らしもの」としてさまざまなパターンをつけたり、調色の具合や砂の粒度を変えることで魅力的な質感を表現することができる。 |
■メンテナンス |
施行後、数年たって表面にひび割れや剥離が起こることがある。その対策として、下地に下擦りや、ムラ直し、櫛目入れなどの処理を丁寧に施しておく必要がある。特に石膏ラスボード下地の場合は、ボードの継ぎ手部分に貫張りを伏せ込むなど、亀裂防止のための処理を施す。その際、ボード止め用の釘類は亜鉛溶融メッキされたものを使用する。 |
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ボード用石膏プラスター中塗り木鏝仕上げの作業 |
仕上げ鏝押さえの作業 |
仕上げの程度にかかわらず得られる、表情の豊かさが魅力
漆喰(しっくい)仕上げは、長い歴史の中で培われ洗練されてきた左官工法である。ごく簡易な仕上げから丹精込めた上等な仕上げまで、それぞれに価値ある表情がある。「撫で」「押さえ」「磨き」などの鏝操作により、独自の質感を備えた幅広いテクスチュアを創り上げることができる。 |
漆喰押さえ仕上げ |
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歩掛 3m2/人日
特徴 最も基本的な漆喰仕上げの一つ。これまで土蔵の壁などに多く行われてきたもので、金鏝などで押さえて仕上げる。 |
漆喰パラリ仕上げ |
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土佐漆喰押さえ仕上げ |
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漆喰引摺り仕上げ |
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歩掛 3m2/人日
特徴 漆喰を撫でる程度で粗面に仕上げるもの。京都御所の壁にもこの仕上げが用いられている。粗放な表情が味わい深い。 |
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歩掛 3m2/人日
特徴 土佐漆喰は一般の漆喰と異なり、糊を混入しないため水に強く、厚塗りができる。また施工後は、白色に変化していく。 |
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歩掛 3m2/人日
特徴 引摺ることで表面に微妙な凹凸を加味する。漆喰の持つ柔らかな質感に、さらに深みを与える仕上げ。 |
卵漆喰押さえ仕上げ |
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黒漆喰本磨き仕上げ |
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赤漆喰押さえ仕上げ |
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歩掛 3m2/人日
特徴 一般に「白壁」のイメージが強い漆喰だが、色粉を加えることで、一味違った表情を創り出すことができる。 |
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歩掛 2m2/人日
特徴 灰墨を入れた漆喰をムラなく塗り付け、丹念に磨き上げていく。その微妙な光沢は落ち着きと格調高さを感じさせる。 |
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歩掛 2m2/人日
特徴 赤い顔料を加えた漆喰を塗り付け、平らに押さえて仕上げる。鮮やかな発色の中にも不思議な趣きがある。 |
湿気の呼吸性や断熱性に優れ、種類も豊富
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■特色 |
漆喰は、消石灰に砂、糊、スサなどを混入した日本独自の塗り壁仕上げ材料。城郭や土蔵など伝統的建物に塗られた純白の漆喰壁が広く知られるが、色粉を加えた色漆喰や材料に糊を使わない土佐漆喰など、その種類は実に豊富である。最近は材料が入手しづらくなっているが、自然のサイクルに適合した塗り壁として、その価値が再び見直されてきた。 |
■適した部位 |
材料の調合によって可塑性が自由に調整できるため、住宅・一般建築の内外壁、塀などにとどまらず、屋根のほか彫塑材としても使われる。 |
■性能評価 |
古くから土蔵など気密性の高い建物に多く使われてきたように、湿気の呼吸性や断熱性に優れている。また、その防火性能についても相当高い評価が与えられる。 |
■施工工程 |
強度が低いため、塗り厚を薄くし、塗り回数を多くするのがポイント。木摺下地の場合、とんぼの一つを延ばして下塗りし、木摺間に十分に摺込む。下塗り後は10日以上おいてムラ直しを行った後、残りのとんぼを摺り込んでいく。上塗りは中塗りが乾ききっていない状態を確認して行う。これより前工程ではできる限り通風をなくすのが良いが、上塗り後は逆に通風を与えて乾燥させるようにする。低温下での施工は避ける。 |
施工工程断面図
(木摺下地の場合) |
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施工工程フローチャート
(木摺下地の場合) |
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■下地 |
木摺や木舞壁、土真壁などの伝統的な下地のほか、コンクリート系、レンガ、セメントモルタルにも適合する。また、剛性はこれらにやや劣るが、鋼製金網やラスシート下地も使用できる。石膏ラスボード下地には、その表面にアルカリ侵入を防ぐサイジング処理を十分に施して使用する。 |
■材料と調合 |
糊材には、ぎんなんや、つのまた(角又)などの海藻糊(ふのり)のほか、種々の化学糊が用いられ、これらを消石灰や貝灰と調合して使用するが、現在は既調合の袋詰め材料を用いることが多い。スサには麻系統の材料が多く使用され、漆喰の収縮性を低減するために川砂を混和することもある。なお、土佐漆喰には糊材は使用しない。
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消石灰
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川砂
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つのまた糊※
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すさ※
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下塗り
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1(下塗り用)
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0.1
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1000
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900(白毛)
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ムラ直し
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1(〃)
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1
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900
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800(〃)
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かの子擦り
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1(〃)
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0.2
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800
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700(〃)
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中塗り
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1(〃)
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0.7
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700
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700(〃)
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上塗り
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1(〃)
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0
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500
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400(さらし)
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※消石灰20kgにつき(g)
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■仕上げ |
【磨き仕上げ】麻スサを数層にわたって塗り付けた上に、さらに紙スサを数度にわたって塗り付け、最後に押さえ込んで、磨き鏝や手擦りで丹念に磨き上げる。相当な日数を要する最上級の仕上げ。
【鏝押さえ仕上げ】磨き仕上げより塗り付ける層の回数を少なくし、最上層は磨かずに鏝で固く押さえ込んで仕上げる。表面の質は鏝のかけ具合によって微妙に変わってくる。
【色もの漆喰仕上げ】中塗りが終わり、約1日放置した後、水引き加減を見て色もの漆喰を薄く塗り付けていく。その後、数層にわたって色もの漆喰をムラなく塗り付け、最後に撫で鏝で通し撫でを行って丁寧に仕上げる。冬場の色もの仕上げはムラが出やすいので避ける。 |
■メンテナンス |
漆喰に混入する糊は保水性を高め、作業性を向上させる利点を持つが、その半面、乾燥後の収縮率が高いため、時としてクラックが入ることがある。その防止のためにはスサを塗り材に混入するとともに、塗り厚をできるだけ薄くし、塗り回数も多くする。 |
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かの子擦りの施工 |
上塗り(塗り付け)の施工 |
上塗り(押さえ)の施工 |
引摺り仕上げの作業 |
自然の色彩と肌合いが味わい深く調和し、伝統美を表現できる
土壁塗は我が国在来の工法で、長きにわたる左官技能工の経験と知恵の積み重ねで培われてきたもの。材料はほとんどが天然産で、もともと各地で入手しやすい材料が使われてきたことから、地方によってさまざまな仕上げがある。現在の土壁工法は、主に京都に伝わる技法を中心としており「聚楽土仕上げ」「大津壁仕上げ」などがその代表と言える。 |
本聚楽水捏ね仕上げ |
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歩掛 2m2/人日
特徴 聚楽土に砂・スサを加えて水でこねた主材料を鏝で押さえて仕上げる。独特のきめ細かで品のある表情が美しい |
京土中塗仕上げ |
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白大津仕上げ |
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赤大津磨き仕上げ |
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歩掛 4m2 /人日
特徴 中塗土の持つ素朴で豊かな素材感を表現する伝統の仕上げ。藁スサの選択によって表情は多彩に変化する。 |
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歩掛 3.3m2 /人日
特徴 伝統的な「押さえ壁」の仕上げで、かつては一般的な壁の上塗りとして用いられてきた。 |
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歩掛 2m2 /人日
特徴 京壁の代表的な工法。色土という自然の素材ならではの深みのある優雅な光沢が魅力。高級仕上げの名にふさわしい。 |
九条土糊捏ね仕上げ |
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京聚楽錆入り仕上げ |
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京聚楽長スサ入り仕上げ |
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歩掛 3m2/人日
特徴 飽きのこないネズミ色が魅力の九条土を用いた代表的な仕上げ。川砂とふのりを混練りした材料を使用する。 |
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歩掛 3.3m2/人日
特徴 聚楽土に鋼の粉を混入し、水でこねた材料を用いる。施行後、鋼の粉が湿気を吸って錆が表面に現れる。 |
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歩掛 2.5m2/人日
特徴 10~15cmぐらいに切った藁スサを塗り込んだ仕上げ。素朴で温もりのある豊かな肌合いがある。 |
健康やリサイクルに適した環境共生型の天然素材
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■特色 |
日本固有の風土や生活様式の中で培われた工法。壁土の種類や調合・工程の選択の自由度も高く、天然素材の色を活かした建築が得られる。防火・防水・防音性などのほか、素材自体が持つ呼吸性から調湿機能にも優れている。無公害で長持ちするうえ、味わい深く経年変化していく。近年になって、健康やリサイクルに適した環境共生型の素材として再評価され始めた。 |
■適した部位 |
住宅・一般建築の内外壁をはじめ、塀や天井など適用範囲は幅広い。 |
■性能評価 |
空気中の水蒸気を取り込むのにちょうど良い大きさの孔が多数開いているため、調湿・調温機能に優れている。また耐火性や断熱性も高い。 |
■施工工程 |
荒壁塗り付け後は通風を良くし、塗り面を十分に乾燥させるようにする。乾燥後のムラ直しや中塗り工程には中塗土を使用。中塗り工程では荒壁土ほど厚塗りしないため、乾燥が速い。塗り重ねが上層に進んでいくにしたがって、塗り厚は薄くなるのが一般的。なお梅雨期の上塗り施工はなるべく避ける。また寒期の施工は凍害に注意し、できれば養生する。 |
施工工程断面図
(木舞壁下地の場合) |
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施工工程フローチャート
(※木舞壁下地の場合) |
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■下地 |
伝統的なものとして、木舞壁下地がある。木舞は全国的に画一的な工法はないが、縦竹および横竹それぞれの間隔は均等にとり、目透かしは割り竹の幅の約2倍以上とするのが一般的。横竹の元末を1本ごとに交互にして、木舞が平均の強度を保つようにかき付ける。このほかにも適用できる下地の範囲は広く、木摺、レンガ、メタルラス、ALCパネル、石膏ラスボード、コンクリート系下地も使用される。 |
■材料と調合 |
荒壁土は藁スサを加え、7日以上水合わせ期間をとる。その際、古土の混入率を多くすれば一般に強度が高くなり、乾燥による収縮も少なくなる。中塗土は荒壁土と同質のものを用い、これに古い藁などを切りほぐして蒸したものを混ぜ、水練りして使用する。土の粘性、作業性は、川砂・スサを混入して調整する。
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壁土(l)
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川砂(l)
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消石灰(kg)
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スサ(kg)
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糊(kg)
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下塗り
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100(荒壁土)
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0
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0
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0.6(藁)
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0
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ムラ直し・中塗り
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100(中塗土)
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60~150
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0
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0.5~0.8(モミ)
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0
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上
塗
り
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水捏ね
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100(色土)
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80
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0
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4.0(みじん)
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0
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糊差し
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100(〃)
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100
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0
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3.2(〃)
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1.5(つのまた)
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糊捏ね
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100(〃)
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50
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0
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0
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2.5(〃)
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普通大津
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100(〃)
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0
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30
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4.0(さらし)
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0
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聚楽土 |
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中途土 |
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■仕上げ |
【土もの仕上げ】「水捏ね」「糊差し」「糊捏ね」の各仕上げは、塗り付け後、十分ムラを取り、鋼製の鏝で仕上げる。
【普通大津仕上げ】下塗りは上塗りと同じ日に行う。下塗りの際はよくムラを取り、適度に水で湿らせるが、その際表面の目をつぶし、鏝で押さえておく。
【大津磨き】上塗り後、鏝でよく磨いて、艶が出始めた頃合いに少量の水を含ませた布で塗面をふき、さらに磨きをかける。この工程を数回繰り返し、最後ビロード・フランネルなどで壁面を横一方向にふいてアクを取り、仕上げる。
【砂壁仕上げ】中塗りをよく乾燥させてから、仕上げ材料を塗り籠め、鏝押さえを十分に行い、入念に仕上げる。 |
■メンテナンス |
変形の恐れのある壁貫・木摺板などは使用せず、下塗り層は上塗り層より強くするという原則を守り、乾燥のための養生期間を十分に取る。 |